M&Aで真の価値を提供する専門家の役割

皆さんこんにちは!
NEWOLD CAPITAL CFOの岩木です。第4回のCxO Diaryは私が担当させていただきます。

M&Aの専門家としての経験

私は会計士・税理士で、「中小企業M&Aに特化した専門家」としてかれこれ10年近くやってきました。前回塚田が書いていたように、私も塚田や大野(当社取締役CSO)と様々な案件を通じて一緒に成長してきたと思っています。

専門家として座学はもちろん大事ですが、お客様の意思決定に本当に役立つアドバイスをする観点では「どれだけ場数を踏んできたか」、さらに言うと「提案した手法を実際どれだけ実行したか」が最も重要です。その意味で、数々のハイレベルな案件を引っ張ってくる塚田・大野にはいつも感謝しています。

さて、私はよく「1,000件のM&Aに関与した専門家/M&Aジャンキー」のように紹介されるのですが、「岩木さんって実際どんなことしているんですか?」とたまに聞かれます。
そこで今回は、「M&A仲介で専門家がどんな役割を果たしているのか」について、これまでの経験を思い出しながら書いてみようと思います。

※以後分かりやすく、譲渡する企業を「対象会社」、対象会社の株主を「売り手」、譲受企業を「買い手」と表現します。

M&A仲介で重要な初期段階のサポート

まずは売り手がM&Aを進めることを意思決定する前段階のタイミングです。

中小企業には様々な問題があります。株主がものすごく分散していたり事情があって粉飾をしていたり…。これまでの面談を振り返ると、「M&Aを検討したいが、こんな問題があるからうちは無理でしょ」「M&Aやるならこんな希望があるけど、そんなことできないよね?」などといった悩みを抱えている売り手は意外と多いです。

そこで、M&A仲介会社との契約前の段階で、「こんな方法でその問題は解決できます」「そのご要望を叶えるスキームは3つあり、それぞれのメリットデメリットはこうです」といったように具体的な案をお伝えします。そうすることで、大枠の方針を事前にイメージすることができ、安心してM&Aの準備に入っていただけます。

企業評価におけるM&A専門家の真価

M&Aを進めることを決めたら、お相手探しの準備である「案件化」をします。具体的には、対象会社の価値を算定する「企業評価」、対象会社の情報や魅力を伝える「企業概要書」の2つがメインとなります。

企業評価は、以前は専門家の代表的な業務の1つでしたが、今では色んなツールが進化しており、一定の倍率や数値を入力すれば誰でも簡易的な評価はできる時代になりました。

しかし、「リアルな相場としてその会社にどれほどの価値があるのか」に関しては、究極的には職人芸だと思います。細かい理論やロジックを突き詰めるとかではなく、対象会社の理解(強み、弱み、エリア、希少性等)、その業界における過去のM&Aの成約相場、今の市況感、将来の市場動向などを踏まえて、簡易的な評価をベースとしつつも、実際どれほどの株価がつきそうか、を想定するのです。

最後は買い手との交渉で決まるものなので、企業評価の結果はあくまで参考値でしか無いのですが、最初から適切な相場観を理解いただくことは、売り手が適切な期待値を持ってM&Aに臨めるという点で有意義だと思っています。

企業概要書に必要な要素

また、企業概要書の作成にも関わります。

個人的に、企業概要書には少なくとも次の3点は記載すべきと考えています。
① 対象会社の様々な情報(いわゆるファクト)
② 対象会社の課題や成長性(M&A後に役立ちそうな情報)
③ M&Aを進める上での論点(リスク事項とその対応策)

特に論点に関しては専門家領域です。会計、税務、法務、労務、許認可、不動産、業界特有論点など、中小企業M&Aにはありとあらゆる論点があります。過去多くの案件に関与してきましたが、いまだに新しい論点に出会います。しかも調べても簡単には答えが見つからないのです。これは、私がいまだにM&Aが飽きない理由の1つかもしれません。

論点をできるだけ事前に洗い出し、対応方針を決めておきます。そうすることで買い手は事前にリスクや交渉のポイントを認識し、丁寧にM&Aを進めることができます。

逆に論点整理がされていない案件では、後になって思いもよらないリスクが発覚してその対応に四苦八苦し、最悪のケースではブレイクして、売り手も買い手もそれまでの苦労が水の泡になってしまいます。仲介者も含めて三方悪しです。

M&Aスキームの戦略的構築

スキーム構築もまさに専門家領域です。これは日頃からM&Aの実務をやっている専門家でないとなかなかできません。M&Aの会計・税務はニッチ領域であり、通常の顧問会計士・税理士は処理を聞かれて調べることはあっても、ゼロから構築することは基本無いためです。

なおどちらか一方の利害を最大化させるFAとは違って、仲介では売り手、買い手、双方のニーズを考慮し、両方の利害を調整する必要があります。また営業担当と話していると、専門家では思いつかないようなアイディアが出てくることもあります。

スキーム構築はM&Aの専門家として最もクリエイティブな業務です。

最近の実例としては、M&A後に売り手が継続勤務をする場合、買い手と一緒に成長を目指すモチベーションが湧くような座組、売り手に別会社がある際にM&Aに伴う税負担を最小限にするスキーム、分散した株主をオーナーに集約するための組織再編などがあります。

DD(デューデリジェンス)における適切な対応

DDに関しても関与する場面があります。もちろん仲介の場合は私自らDDを実施することはできませんが、DDの結果を公平にジャッジできます。

例えば、DDをする先生がM&Aに慣れていない場合、DDレポートで過度なリスク報告をすることがあります。その場合、買い手は必要以上にリスクを重く受け止め、本来なら許容できる水準のリスクを取らず、結果として成長のためのM&Aの機会を失うことがあります。また、問題点の発見はするものの対応方法まではアドバイスしないDD会社もあるので、その場合には検出事項の対応策を考え、提案します。

リスクを最小限に抑える最終契約フェーズのサポート

さて、最後は契約締結のフェーズです。最近はルシアン問題などの背景で、最終契約書の内容はこれまで以上に重視されています。また、仲介会社としてM&AガイドラインやM&A仲介協会の規程に沿った対応をするのは最低限必要なことです。

しかし本質的に大切なのは、「売り手・買い手ともにそのM&Aのリスクを適切に認識し、問題が生じたときの対応として納得いく内容が定められているか」ということだと思います。リスクが一切無いM&Aはありません。売り手も買い手も少なからずリスクを取ってM&Aを実行しています。

そのため先ほどの観点で、後悔の無い適切な意思決定をしていただくようにサポートするのが仲介者、ひいては専門家の役目だと思います。

M&A専門家として高付加価値を

いかがでしたでしょうか。

M&A仲介において専門家の業務は攻めも守りもありますが、最終的には「売り手・買い手双方にとって良いM&Aをしていただく」、「そのために専門的で付加価値の高いアドバイスを提供する」ということに尽きるかと思います。

これからも専門家として精進していくので、M&Aの専門家領域でお悩みがあればいつでもご相談ください!
第4回は、塚田から大野と手がけたディールについてお届けします!

岩木 保樹

取締役CFO

岩木 保樹

この記事を書いた人

京都大学卒業後、監査法人トーマツ、株式会社日本M&Aセンターを経て、当社。
M&Aに特化した専門家として、累計1,000件のディールに関与。最適なスキーム設計、論点対応、バリュエーション、DD業務等、M&Aの専門家だけでなく、常に最前線の現場で活躍する公認会計士・税理士。

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