「令和5年度補正予算案に基づく10次公募」への応募はまだ間に合います! ※ 2024年7月12日執筆
(申請期間:2024年7月1日(月)~2024年7月31日(水)17:00まで)
中小企業にとって、M&Aは事業の継続と発展を図るための有力な手段です。
しかし、M&Aには多くの費用が伴い、そのハードルは決して低くありません。
そこで役立つのが「中小企業生産性革命推進事業 事業承継・引継ぎ補助金」です。
この補助金について、申請の流れに沿ってわかりやすくお伝えします。
Contents
中小企業生産性革命推進事業 事業承継・引継ぎ補助金とは?
「中小企業生産性革命推進事業 事業承継・引継ぎ補助金」は、中小企業者及び個人事業主が、事業承継や事業再編及び事業統合を契機として新たな取り組みを行う事業等について、その経費の一部を補助することにより事業承継や事業再編及び事業統合を促進し、経済の活性化を図ることを目的としています。
本コラムでは、中小企業生産性革命推進事業 事業承継・引継ぎ補助金を「M&A補助金」と表記します。
M&A補助金の申請枠は3種類
申請枠は以下の3つに分かれています。
① 経営革新枠(創業支援類型、経営者交代類型、M&A類型)
事業承継やM&Aを契機とした経営革新等への挑戦に要する費用の補助金です。
補助対象経費:設備投資費用、店舗・事務所の改築工事費用 等
② 専門家活用枠(買い手支援類型、売り手支援類型)
M&Aによる経営資源の引継ぎを支援するため、M&Aに係る専門家等の活用費用の補助金です。
補助対象経費:M&A支援業者に支払う手数料、セカンドオピニオン 等
③ 廃業・再チャレンジ枠
再チャレンジを目的として、既存事業を廃業するための費用の補助金です。
補助対象経費:廃業支援費、在庫廃棄費、解体費 等
M&A補助金の対象となる企業の要件
本補助事業の補助対象者は、M&Aで株式・経営資源を譲り受ける買い手と、M&Aで株式・経営資源を譲渡する売り手のどちらも対象となりますが、経営資源引き継ぎの要件を満たす必要があります。
経営資源引き継ぎの要件とは、「最終契約書に基づくM&A取引が完了し、経営権や所有権の移転が完了すること」や「不動産業や特定業種では、常時使用する従業員1名以上の引継ぎが行われること」などが挙げられます。
詳細については「中小企業生産性革命推進事業 事業承継・引継ぎ補助金 専門家活用枠【公募要領】」をご確認ください。 また、中小企業基本法第2条に準じて、以下のとおり本補助金における中小企業者等が定義されています。下記の表を参照し、当てはまるかを事前に確認しておきましょう。
M&A補助金の対象となる経費
補助金の対象となる経費について、以下に具体的にまとめました。
謝金
補助対象事業を実施するために必要な謝金として、専門家等に支払われる経費(学術的な観点から知識を教授された際の礼金)が対象です。
旅費
補助対象事業を実施するために必要な国内出張及び海外出張に係る経費(交通費、宿泊費)が対象です。
外注費
補助対象事業の実施に必要な業務の一部を第三者に外注(請負)するために支払われる経費が対象です。
委託費
補助対象事業の実施に必要な業務の一部を第三者に委託(委任)するために支払われる経費が対象です。
ただし、FA・仲介契約締結前のコンサルティング費用やバリューアップのためのコンサルティング費用は対象になりません。
委託費のうち、中小M&Aの手続進行に関する総合的な支援に関する手数料については、「M&A支援機関登録制度」に登録された登録FA・仲介業者が支援したものに限り対象となりますので、注意しましょう。
M&A補助金の補助金額
M&A関連費用の3分の2(下限50万円/上限600万円)を補助金で賄うことができます。以下の表をご参照ください。
補助率の決まり方
売り手の補助対象経費の2分の1または3分の2以内の補助率は、以下のいずれかの要件を満たす場合において3分の2以内となります。
【要件】
・物価高等の影響で営業利益率が低下している場合
・直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の場合
補助下限額について
補助対象経費の3分の 2 または2分の1の金額が50 万円を下回るものは対象外となります。
補助上限額について
補助上限額は売り手買い手ともに上限額600万円です。しかし、M&Aによる経営資源の引継ぎが実現しなかった場合は、補助上限額は300万円以内の変更となります。
上乗せ額について
廃業費の補助上限額は150万円となります。ただし、廃業費に関しては、M&Aによる経営資源の引継ぎが実現しなかった場合は、補助対象外となります。
全体の流れと10次公募のスケジュール
次に、申請の流れと申請に必要な書類についてご紹介します。
令和5年度補正予算案に基づく10次公募のスケジュールは以下の通りです。
M&A補助金の流れ|gBizID取得申請〜交付申請書類作成・提出
今回の10次公募は、2024年7月31日(水)17:00までに交付申請書類を作成して提出する必要があります。
申請には、「gBizIDの取得申請」と「交付申請書類の策定申請」の2つが必要です。
gBizIDの取得申請
gBizIDとは、1つのID・パスワードで様々な行政サービスにログインできるサービスです。
補助金の申請にはgBizIDプライムのアカウントを取得する必要があり、1週間程度で取得できます。
必要書類は以下の通りです。
〈書類郵送申請の場合〉
・法人の印鑑証明書
・登録印鑑
〈オンライン申請の場合〉
・マイナンバーカード
交付申請書類の申請
jGrantsというデジタル庁が運営する補助金の電子申請システムで必要書類の申請を行います。
必要書類は以下の通りです。
〈買い手〉
・履歴事項全部証明書(交付申請日以前3カ月以内)
・直近3期分の決算書(貸借対照表、損益計算書)
・(常時使用する従業員1名の)労働条件通知書
・代表者の住民票(交付申請日以前3カ月以内)
〈売り手〉
・履歴事項全部証明書(交付申請日以前3カ月以内)
・税務署受付印のある確定申告書(別表一、別表二、別表四)
・直近3期分の決算書(貸借対照表、損益計算書)
・株主名簿(代表者の原本証明付き)
・(常時使用する従業員1名の)労働条件通知書
・代表者の住民票(交付申請日以前3カ月以内)
また、物価高等の影響により営業利益率が低下している、または直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の場合は、売り手における補助率3分の2以内の対象となるため、追加で必要書類を提出します。 加えて、加点事由に該当する場合は、該当することを証明する書類を準備します(次章参照)
M&A補助金の流れ|交付申請審査〜交付決定通知受理
交付申請の審査は、申請者が「補助対象者」及び「補助上限額、補助率等」に適合しているかを審査されます。
また、事業の継続性と安定性、専門家の活用、地域経済への貢献、イノベーションや生産性向上の取り組み、環境への配慮の取り組みをしている場合は、審査において加点されることがあります。そのため、該当する場合は以下の書類提出が追加で必要となります。
① 「中小企業の会計に関する基本要領」又は「中小企業の会計に関する指針」の適用を受けている場合
※以下のいずれかの書類
・中小企業の会計に関する基本要領のチェックリスト ※顧問会計専門家印のあるもの
・中小企業の会計に関する指針のチェックリスト ※顧問会計専門家印のあるもの
② 経営力向上計画の認定、経営革新計画の承認又は先端設備等導入計画の認定書を受けている場合
・(経営力向上計画)経営力向上計画の認定書および申請書類
・(経営革新計画)承認書
・(先端設備等導入計画)認定書
③ 地域未来牽引企業である場合
・地域未来牽引企業の選考証
④ 中小企業基本法等の小規模企業者
※以下の書類に加えて、jGrants上の申請項目に交付申請日時点での従業員数を記載すること。
・(法人の場合)直近期の法人事業概況説明書の写し
・(個人事業主の場合)直近期の所得税青色申告決算書(P.1~P.4)
⑤ (連携)事業継続力強化計画の認定を受けている場合
・交付申請時に有効な期間における、(連携)事業継続力強化計画の認定書および申請書類
⑥ ワーク・ライフ・バランス等の推進の取り組みに該当する場合
・基準適合一般事業主認定通知書の写し ※計画期間が有効であること
⑦ 健康経営優良法人である場合
・健康経営優良法人の認定証
⑧ サイバーセキュリティお助け隊サービスを利用している場合
・独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)が登録・公表した「サイバーセキュリティお助け隊サービス」の利用が確認できる書類
⑨ 加点事由における賃上げ要件を充足する場合
・賃金引上げ計画の誓約書
・従業員への賃金引上げ計画の表明書
・(売り手のみ)M&A 以降も賃上げを実施する誓約書
・交付申請時点での直近の給与支払期間における賃金台帳の写し
⑩ PMI(Post Merger Integration)の実施を検討している場合
・(買い手・売り手共通)PMI 検討の申請書
・PMIに係る検討事実・契約準備等が確認できる資料
上記の審査に通過すると、交付決定通知を受理することができます。
M&A補助金の流れ|補助事業実施・状況報告〜実績報告書提出
実績報告時における補助対象事業の進捗状況に応じて、以下の必要書類を提出する必要があります。
進捗状況に合わせて必要な書類を確認しておきましょう。
着手(専門家との契約締結)
進捗状況が着手の場合は、M&A補助金の補助対象外となります。
基本合意書締結
買い手・売り手ともに、専門家作成資料、基本合意書の写しが必要です。
専門家作成資料とは、M&Aの取り組みが着手・進行したことが分かる専門家作成の資料を指します。
買い手は、M&Aが未成約の場合は原則、買収監査の費用のみが補助対象となります。 売り手は、企業概要書、マッチングプラットフォーム掲載、専門家の調査報告書等が補助対象となります。
最終契約書締結
買い手・売り手ともに、専門家作成資料、最終契約書の写しが必要です。
クロージング
買い手は、経営資源の引継ぎ(クロージング)に伴う代金の支払が確認できる証憑が必要です。
売り手は、経営資源の引継ぎ(クロージング)に伴う代金の受領が確認できる証憑が必要です。
ただし、株式移転、新設合併、支配株主(法人)が被承継者となる廃業の場合などは必要な書類が異なりますので、詳細はお問い合わせください。
M&A補助金の流れ|確定通知受領〜補助金受領
実施した事業内容の検査と経費内容等の確認により、交付すべき補助金の額を事務局にて確定した後、補助金を受領できます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
M&A補助金は、M&Aを活用して成長を実現する中小企業にとって、メリットが大きい補助金です。ぜひ活用を検討いただければと思います。
実際に弊社ご支援先でも、補助金の申請に関するご相談や実施に活用される事例が増えています。
しかし、申請手続きが複雑で、必要な書類の準備、要件の確認やスケジュール管理に不安を感じる方も多いかと思います。
実際に利用された買い手様から「成約や基本合意のスケジュールを認識しておかないと制度の利用ができない可能性があったので、M&Aアドバイザーに早めに相談して良かった」という声をいただきました。
M&Aは買い手・売り手が足並みを揃えて進めていく必要があるため、計画的かつ円滑な進行が求められます。当社では、M&Aの補助金に関するサポートを含めて、包括的にM&Aの支援をいたします。 安心してM&Aを進めていただけるよう、専門的な知識と経験を活かしてお手伝いさせていただきますので、ぜひご相談ください。
参考
中小企業生産性革命推進事業 事業承継・引継ぎ補助金 専門家活用枠 【公募要領】 10次公募
事業承継・引継ぎ補助金Webサイト